「今回は残念ながら…」
医師の口から出た言葉に、
あぁやっぱりそうなのかと納得する自分と、
どこか諦めきれない感情に気づく。
会計で呼び出されるまでの間、
二人でロビーから外を無言で眺めていた。
もうすぐクリスマスだというのに
どこか活気のない街並み。
右隣で少しずつ沈んでいく嫁さんの心に気づき、
僕は頭の中で文章を組み立てながら、ぽつりぽつりと語りかける。
決して悪い状態ではなかった。
着床がうまくいくボーダーラインからわずか3ポイント弱届かず。
胚はまるで植物のように根を伸ばし、着床場所に根付く。
ただそこからの成長が芳しくなかったことが今回の結果を招いた。
「あくまでも目安なんだから、
もしかしたらこれから成長してくれるかもしれないし。」
100人の医者が否定しても僕は…
「あと3ポイントだから、次はきっとうまくいく!」
…例え、何の根拠もない小手先の言葉でも
(だからいつもの元気出してよ。)
今までずっと頑張ってきた君のこと
勇気づけられるならペテン師にでもなってやるよ。
…なんて、思ったりして。
移植をしている人たちの間では、たまごちゃんといって
受精卵に特別な感情を抱く人は少なくない。
僕らも、エコーに映る丸く白い光をみて、
パールみたいに輝いてるなぁとウキウキしてただけに、
辛い気持ちはどうしても湧いてくる。
時折胸を締め付ける感覚を感じつつ、笑顔で。
ポジティブな感じで言葉を発するのは難しい。
きっと世の同じような悩みを抱える旦那様はみんなそうなんだろう。
まして、一人通院する奥様方はなおさら心細いことだろう。
だからこそ、みんな頑張れ。
そして、僕らにいろんなことを教えてくれるたまごちゃんに、ありがとう。
まだわからないけど、どうか奇跡が起きてくれますように。
0 件のコメント:
コメントを投稿